箱入り結婚のススメ
就職の説得は、それはそれは大変だった。
勝手に面接を受けて採用が決まってからも、父と母から、就職を辞退するように説得される毎日で、うんざりしていた。
最終的には、『どうしても許されないなら、家を出る覚悟がある』とハッタリを口にすると、渋々首を縦に振ったのだ。
私はどうしても自分の足で立ってみたかった。
父と母に守られながら生きていくのは簡単だ。
だけど、一度くらい自分で働いて、お金を稼ぎたい。
そういう経験をして、自分を鍛えたい。
それでも仕事を始めた当初は、父の心配ぶりが驚くほどで、毎日のようにどこかに擦り傷を作る私に「仕事がしたいのならもっといい会社を紹介してやる」とか、「今すぐお見合いを」と自分の信頼する取引先の人の写真を持ってきたりもした。
そうやってあの手この手で幼稚園辞めさせようとしたけれど、「これも、将来子供ができたときの勉強です」ともっともらしいことを言うと、泣く泣くあきらめたようだ。