闇に響く籠の歌
「待ってよ、圭介。何にも分かってないのよ。これで帰るなんて、蛇の生殺しじゃない」
「あのな。これ以上、ここでウロチョロしてるのがばれて困るのは遥の方じゃないのか? おじさん、こういうことは厳しいよな?」
圭介のその声に遥は何も言うことができなくなっている。そんな彼の言葉に何かを勘付いたのだろう。水瀬が驚いたような声を上げている。
「今、一瀬っていったよね? ひょっとして、君のお父さん、月峰署の一瀬警部?」
その問いかけに圭介は知らないぞ、というような顔を遥に向ける。一方、問いかけられた本人はすっかり困り果ててしまっている。それが肯定だと判断したのだろう。水瀬の声はどこか明るいものになっていた。
「やっぱりそうなんだ。一瀬って珍しい名字だと思ったから。親父さん、この二人にならもうちょっと話してもいいんじゃないですか? 月影高校の生徒だっていうし」
「そうだな……ま、一瀬警部のお嬢さんだっていうのが本当ならな」
「そこまで疑わなくてもいいと思いますよ。それに、すぐに調べられるんだし。それはそうと、立ち話もなんだよね。柏木さん、お店にお邪魔してもいいかな?」
水瀬の言葉に、柏木は一瞬、嫌そうな表情を浮かべている。だが、ここで拒否しても無駄だということを悟っているのだろう。渋々ながら「いいですよ」という返事を口にする。それを耳にした水瀬は満面の笑みを浮かべて、圭介たちに話しかけていた。
「よかったね。篠塚君だったっけ? 柏木さんの店のコーヒーって美味しいんだよ。楽しみにしててね」
いかにも楽しそうなその声に、圭介は曖昧な表情で頷くことしかできない。遥も同じ思いを抱いているのだろう。高校生二人の顔には困惑した色しか浮かんでいない。
そんな彼らの背中を押すようにして、水瀬は柏木の店へと足を運ぶ。その後ろから不機嫌そうな顔をした川本がついてきていた。
「ほら、ここだよ」
そう言って、水瀬が指差したもの。そこは『のわーる』と書かれた看板がぶら下がる喫茶店の入り口だった。穏やかな笑顔を浮かべているが、どこか強引さも見え隠れする水瀬の様子。
「あのな。これ以上、ここでウロチョロしてるのがばれて困るのは遥の方じゃないのか? おじさん、こういうことは厳しいよな?」
圭介のその声に遥は何も言うことができなくなっている。そんな彼の言葉に何かを勘付いたのだろう。水瀬が驚いたような声を上げている。
「今、一瀬っていったよね? ひょっとして、君のお父さん、月峰署の一瀬警部?」
その問いかけに圭介は知らないぞ、というような顔を遥に向ける。一方、問いかけられた本人はすっかり困り果ててしまっている。それが肯定だと判断したのだろう。水瀬の声はどこか明るいものになっていた。
「やっぱりそうなんだ。一瀬って珍しい名字だと思ったから。親父さん、この二人にならもうちょっと話してもいいんじゃないですか? 月影高校の生徒だっていうし」
「そうだな……ま、一瀬警部のお嬢さんだっていうのが本当ならな」
「そこまで疑わなくてもいいと思いますよ。それに、すぐに調べられるんだし。それはそうと、立ち話もなんだよね。柏木さん、お店にお邪魔してもいいかな?」
水瀬の言葉に、柏木は一瞬、嫌そうな表情を浮かべている。だが、ここで拒否しても無駄だということを悟っているのだろう。渋々ながら「いいですよ」という返事を口にする。それを耳にした水瀬は満面の笑みを浮かべて、圭介たちに話しかけていた。
「よかったね。篠塚君だったっけ? 柏木さんの店のコーヒーって美味しいんだよ。楽しみにしててね」
いかにも楽しそうなその声に、圭介は曖昧な表情で頷くことしかできない。遥も同じ思いを抱いているのだろう。高校生二人の顔には困惑した色しか浮かんでいない。
そんな彼らの背中を押すようにして、水瀬は柏木の店へと足を運ぶ。その後ろから不機嫌そうな顔をした川本がついてきていた。
「ほら、ここだよ」
そう言って、水瀬が指差したもの。そこは『のわーる』と書かれた看板がぶら下がる喫茶店の入り口だった。穏やかな笑顔を浮かべているが、どこか強引さも見え隠れする水瀬の様子。