闇に響く籠の歌
圭介の全身から発せられるオーラは『不機嫌です』としか表現できない。そのまま机に突っ伏してしまった彼に、遥は思いっきり不満気な声を上げている。


「圭介の意地悪。そんなに騒いでないわよ。ちょっと、今のトレンドを圭介に教えてあげたんじゃない」

「俺はお前の趣味につきあう気はない。ついでに先生くるまで寝かせろ。マジで眠いんだから」


机に突っ伏しているせいか、圭介の声はどこかくぐもったものになっている。それに対して、頬を膨らませることで抗議の色をみせる遥。

しかし、相手がそれを見ていないのでは話にならない。結局、何もできない状態になった彼女はカバンを机に放り投げていた。


「分かったわよ。じゃあ、後でつきあってよね」

「お前、今の話の流れでそういうわけ? ホント、懲りないヤツだね」

「圭介、寝るんじゃなかったの?」

「お前の馬鹿さ加減で目が覚めた。どうしてくれるんだ」


その声に遥はキャッキャッと喜んで手を叩いている。彼女のそんな様子にすっかり呆れかえっている圭介。いつものことじゃないかと圭介に同情の目を向ける奥寺。

そんな中、バタバタと担任教師である森田が入ってくる。その勢いで簡単にSHRをすませた彼は、急いで教室から立ち去っていた。


「おい、何かあったのかな?」

「どうだろう? 別に何もないんじゃないか?」

「でもさ、篠塚。森田が速攻で出て行ったんだぞ。何かあると思った方がよくないか?」

「そんなことないだろう。時間がなかったから慌ててたんじゃない?」


そう言いながら、圭介は腕時計の針を奥寺に見せている。

そこに示されているのは、まもなく一時限目が始まろうとする時刻。それを目にした奥寺は、大きく息をつくことしかできなかった。


「篠塚の言いたいこと、分かるわ。しかし、朝から伊藤の授業ってキツイよな〜」

「仕方ないだろう。そういう時間割なんだから」


ぼやく奥寺に、圭介はサラリと切り返す。だが、授業開始のチャイムが鳴ったにも関わらず、担当教師が姿をみせない。そのせいだろう。教室の中には、ざわついた空気が広がっていた。


「伊藤、どうしたのかな?」

「不思議だよな。あの先生、授業開始のチャイムを待ち構えているようなヤツだし」

「だよね。あれって、廊下で待ち伏せしてるんだって。なにしろ、鳴った瞬間だぞ」
< 4 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop