嘘つきラブレター




「だって、寂しいじゃん。」



下を向いていた顔を上げて、今日初めて、泰秀の顔を真っ直ぐ見た。



ついこの間まで黒かった茶色に染められた髪の毛に、卒業と同時に開けたピアス。


泰秀は少しだけ、別人みたい。
どんどんどんどん、違う人になっていってるみたい。



……ねえ、

泰秀は、淋しくないの?



「大学もきっと楽しいよ。」



ーーなんで

そんなこというの?


胸をグシャグシャに握り締められたような気分だ。


私は泰秀に会う機会が少なくなって寂しいよ。会おうと約束しなきゃ会えない日常が嫌だよ。苦しいよ。



私はただ、


俺も寂しい

って、言って欲しいだけなんだよ。




泰秀はいとも簡単に綺麗な黒髪を茶髪に変えて、自分の身体に穴を開けて。
私の髪にも、触れて。



私は黒髪を茶色にすることができなくって。ピアスなんか開けたいとも思わないし、泰秀に触れることもできなくて。



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