今日は、その白い背中に爪をたてる
会って何するのって恋人でもない男女がわざわざ一つ屋根の下ですることなんて決まってるし。


私の部屋になんてあいつを入れたことないし、いつも会うのはあいつのキープしたホテルだし。


なのに。



「なのに昨日は朝から自宅だった、この3年間一度もなかったのに。
しかもあいつのつくったご飯食べて、DVD観て……」



いつも会ったらすぐする例の‘‘行為”まで半日ほどかかった、まるで恋人みたいだったのだ、つまり。



「だからツンデレみたいなこと言ってブチ切ったわけ?」



「だって……」



ああ、視界がぼやけてきた。


昨日の酷い幸福感に満たされて。



「好きなんでしょ?晴斗君のこと。」



「………ちがう。」



肯定なんてできるはずない。



「私が好きだなんて言ったら、困らせるだけだもの。」



そうだ、私はただのセフレ。


身体のために繋がってるだけ、そこに恋愛感情は存在しない。


存在した時点で、終わり。



「…大丈夫、来月にはけりがつく。」



自分自身に言い聞かせるように言いながら座り直した私を、皐月はハッとしたように目を見開く。


まさかあの話、と小声で呟いた彼女の言葉に私は無言で頷いた。


丁寧にこめかみから落としていく柔らかい唇も、触れるか触れないかのもどかしさで身体中を撫でる手も。


私の最奥を貫く熱いものも。



『晶……っ』



真っ白になる瞬間の悩ましげに眉を寄せる表情も、私のじゃないんだから。


< 7 / 48 >

この作品をシェア

pagetop