俺様常務とシンデレラ
「おせーよ」
やっと思い出したのか、と言って笑う常務が、記憶の中の黒いベストの男の子とぴったりと重なる。
「だ、だって! 私、あのときまだ小さくて……! はじめから知ってたなら、言ってくれればよかったのに!」
私が手のひらでペシッと常務のタキシードの胸を叩くと、その襟元から黒いベストがちらりと覗く。
ああ、もう!
なんで私、今の今まで気が付かなかったんだろう!
思えば常務も夏目さんも、幼い頃の夜やアンクレットにまつわる意味深な発言をすることが何度もあった。
私がアンクレットをエレナちゃんにあげたときの常務の取り乱し方だって、普通じゃなかったのに!
ガーンとショックを受ける私の手を取り、常務が困ったように眉を下げる。
「それはほら、俺、もう"運命"とか信じてなかったし。だからあの夜、俺はお前の連絡先を聞くのをやめた。それで終わりのはずだったんだ」
常務は肩越しに後ろを振り返り、参ったという顔で小さく笑った。
「夏目が、お前を秘書として俺の元に連れて来なければ」
そこには見覚えのある細長い箱を手に持った夏目さんと、黒いミニドレスを着た小鞠ちゃんが立っている。
夏目さんが黙ってその箱を差し出すと、常務は中から光を浴びてサラサラと輝くアンクレットを取り出した。
……私がエレナちゃんにあげてしまった、リボンのモチーフがついたピンクゴールドのアンクレット。