俺様常務とシンデレラ
私は幼すぎてその意味もわからずにアンクレットを受け取ったし、常務も本当は深い意味などなく私にあげてしまったのかもしれない。
私はその夜、キラキラしたピンク色の輪っかのようなそれの使い方がわからず、母にあげようとしたんだった。
「これはあなたが持っているべきものだから、大事に引き出しにしまっておきなさい。いつか、あなたの王子様が現れるといいね」
母がそう言いながら、私の小さな手の中にアンクレットを戻してくれたのを思い出す。
そっか、だから私……。
あのアンクレットは、お母さんがくれたものだとばかり……。
それなら常務も夏目さんも、私がそのときの女の子だと、はじめから知っていたんだ。
だって、常務と再会した夜、あの夢を見た私はなんとなくアンクレットを付ける気分になっていた。
常務は、脱げてしまったハイヒールを履かせてくれたではないか。
アンクレットのついた、私の左足に。
* * *
ワルツが終わり、小さな静寂に包まれたホールの中で、私は呆然として常務を見上げていた。
「どうして、教えてくれなかったんですか? あのアンクレットは、常務がくれたものだって……」
私がため息のように小さな声で問うと、常務は目を丸くしてわたしを見下ろし、それから満足そうに微笑む。