俺様常務とシンデレラ
* * *
「あの、本当にいいんですか? パーティー抜け出したままで……。理久さん、絶対怒りますよ」
「知るかよ、そんなの」
ふんっとなぜか勝ち誇ったように笑う常務。
まさか、この前ちょっと騙された腹いせとか思ってないよね?
……こ、子どもっぽい!
「だいたいあいさつは済ませたし、ワルツまで踊って見世物になってやったんだ。十分だろ」
そう言って私の手を引く常務は、エントランスに駐まっていた真っ白い車に私を導き、ドアを開けて後部座席に押し込んだ。
私の左足首で、アンクレットについたリボンがサラリと揺れる。
「お待ちしておりましたよ」
目を引くその車の運転席に座っていたのは、葦原会長とパーティーに出席していたはずの夏目さんだった。
「えっ! なんで夏目さん!?」
「会長には許可をいただいておりますから、ご心配なく」
おろおろする私をさらに奥に押し込んで、常務も隣へ乗り込んでくる。
「まあ、あの親父もたまには物分かりがいいところもあるってことだ」