俺様常務とシンデレラ

この会場に来てはじめて、常務のことを呼び捨てにする女の人の声を聞いた。


常務が私の腰に手を添えたままクルリと身体の向きを変えるから、そのまま私もそちらを向かされる。

思わずギュッと目をつぶってしまった。


くうっ……!

常務の女性関係なんて、あんまり知りたくない。

それでなくても常務は、会う人会う人に「お綺麗ですね」とか「お美しいです」とか、そんなことばっかり!



「小鞠(こまり)じゃないか! 久しぶりだなあ!」


だけど常務があまりに嬉しそうな声でそう言うから、つい気になってしまって、そっと目を開けてみた。


「……大和、その人だれ?」


目を開いた私の前にいた女性は、腕を組んで、上から下まで品定めでもするように私をじーっと見ていた。

どひゃあ、綺麗な人……!

目の前の美女に圧倒された私は、じりじりとその場を退散して潔く常務の隣を譲りたいくらい弱気だった。


だけど常務はそれを許してくれなくて、私の腰をさらに引き寄せ、綺麗な女の人の容赦ない視線に私を晒す。


「佐倉絵未さんだよ。俺の秘書」


声を弾ませて私を紹介する常務。

その口調や隣から感じる空気で、この人に対してはあまり気兼ねがないのかなと思った。
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