俺様常務とシンデレラ
小鞠と呼ばれた女の人は、まだ少し幼さが残り、高校生くらいにも見える。
目を細めて私のつま先から頭のてっぺんまでをじっくり観察し、もう一度足元まで視線を戻した。
「……アンクレットは素敵だね」
「だろ?」
判決を下すようなツンとした声だったけど、一応褒められたのは私なのに、なぜか常務がうきうきと嬉しそうに答える。
今の常務は、なんていうか、ニュートラルな感じだと思う。
完璧に繕った仮面を被っているわけではないけど、ここはまだ人の目があるところだもん。
だけど常務の黒い瞳はキラキラと無邪気に輝き、ただ純粋に、この女性と会えたことを喜んでいるみたいだった。
そうか、こういうキラキラ王子モードもあるのか……。
私は常務の新たな一面を発見したことにちょっと得した気分になりつつも、それを引き出した目の前の美女に、だんだんモヤモヤした気持ちが膨らんでくる。
「小鞠、また綺麗になったな。若い頃のお母さんにそっくりだよ」
常務は密かにムッと唇を尖らせていた私に視線を落とし、とっても大切な宝物箱の蓋を開けるように、彼女のことを紹介してくれた。
「佐倉さん、彼女は東堂小鞠さん。先日お会いした東堂会長の娘さんで、まだ中学生なんだ」
「えっ、ええぇーーー!?」
うそ! 娘さん!?
しかも中学生なのー!?
あんまりびっくりしてつい大きな声を出してしまい、慌てて口を閉じる。