俺様常務とシンデレラ
突然引き寄せられてよろけた身体を硬い胸に受け止められ、慌てて顔を上げると、ムダにキラキラした常務が真上から私を見下ろしていた。
「あっ、じょ、常務……!」
「うん、疲れたよね。わかってる。はやく行こうか」
常務は後ろからお腹に回していた腕をそのまま私の腰に添えて、有無を言わせずホールの出口に向かって歩き出す。
「じゃあ夏目、ちょっと抜けるから」
常務は口角をキュッと上げて笑顔のような表情を浮かべたけど、漆黒の瞳は鋭さを帯びて、夏目さんを威圧しているみたいだった。
ひやあ、なんで怒ってるの?
抜けるってことは、ふたりきりになるってこと?
久しぶりのお怒り常務の降臨にぶるぶる震える私とは対照的に、夏目さんは余裕の表情でひらひらと手を振って、常務に連行される私を見送った。
タキシードで正装した男性がほとんどで、色とりどりのドレスや着物で着飾った女性を、それぞれがエスコートしている。
葦原館の周年記念パーティーに呼ばれるような人たちだから、きっとみんな顔見知りなんだろう。
談笑し合い、話に花を咲かせる人々。
「大和!」
その間を縫って広いホールを突っ切り、廊下に足を踏み入れかけたとき、名前を呼ばれた常務はその声に反応して足を止めた。