胡蝶蘭


だけど、こんなに焦ってたのに
あたしに向けられた視線に妙に冷静になった。


外はガヤガヤと騒がしく、
雨も相変わらず大量に降っている。


『裏……、裏口こっちです!!』


ものすごく冷静なあたし。
誰か褒めて欲しいよほんとに。


「あ!?てめぇあいつらの仲間とかじゃ
ねぇだろーな!?!?」

とかなんとか聞きづてならないことを
言われた気がするけど

しかもあたし
『じゃあこの店で死ねば!?』

とかなんとか偉そうに言った気がする。


この辺の記憶ものすごく曖昧。
ただひとつ覚えてるのは。


「案内してくれ。」


低く心地よい声があたしを促したこと。



この店はホステスやキャバ嬢さんたちの
ヘアセットだけをする店じゃない。

風俗とか、ちょっとやばい仕事のことか
怖い思いをした子たちのための
駆け込み場所でもある。


ここの店長は元風俗嬢だ。
自分自身過激なプレーに耐えられず
逃げたことがあったそうな。


そんな時のために表から入ってきた子を
通すための地下にちょっとした喫茶店がある。

そこを抜けた先には裏口
というか、裏口は一回の店にも普通にあるから
裏口part2ってやつがあるわけで。


きっとそこは気づかれてないだろうから
そこから逃げてください
みたいなことを説明した気がする。

ここらへんの記憶もあんまりない。
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