LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
*
その個室は小さくて、
カーテンで仕切られた向こう側では、
スポーツ中継のような、テレビの音が静かに漏れていた。
桐生さんはそっとカーテンを開けて奥を覗き込んだ。
その途端にテレビの画面が真っ暗になり、
画面に少年の影が映しだされる。
「誰だよ……」
ベッドの上にいた少年が、
訝しげに俺たちを睨みつけた。
「こんにちは。初めまして。
黒川、宗佑くんですね?今日から
黒川くんの担当医になります。桐生です。よろしくね」
「……あっそ」
こいつ、何様だよ。
宗佑と呼ばれたその少年は、
面倒くさそうに返事をした。
大人なめんなよ?
ばーか。
俺が宗佑を睨みつけていると、
宗佑は俺に視線を寄越し、指を指した。
「で、そっちは?」
「こちらは同じく黒川くんの
担当研修医、神崎医師です」
宗佑がじっと俺を見据えた。
何だよ。
その反抗的な目は。
「俺、研修医なんか回されるほど、
どうでもいい患者ってことか」
「なっ!?お前何……!!」
むかつく。
研修医“なんか”っつったな!?
暴れそうになった俺を桐生さんが静かに制した。