LAST SMILE ~声を聞かせてよ~






その個室は小さくて、


カーテンで仕切られた向こう側では、
スポーツ中継のような、テレビの音が静かに漏れていた。


桐生さんはそっとカーテンを開けて奥を覗き込んだ。


その途端にテレビの画面が真っ暗になり、
画面に少年の影が映しだされる。




「誰だよ……」


ベッドの上にいた少年が、
訝しげに俺たちを睨みつけた。


「こんにちは。初めまして。
 黒川、宗佑くんですね?今日から
 黒川くんの担当医になります。桐生です。よろしくね」



「……あっそ」




こいつ、何様だよ。


宗佑と呼ばれたその少年は、
面倒くさそうに返事をした。




大人なめんなよ?


ばーか。


俺が宗佑を睨みつけていると、
宗佑は俺に視線を寄越し、指を指した。



「で、そっちは?」


「こちらは同じく黒川くんの
 担当研修医、神崎医師です」



宗佑がじっと俺を見据えた。





何だよ。



その反抗的な目は。



「俺、研修医なんか回されるほど、
 どうでもいい患者ってことか」


「なっ!?お前何……!!」




むかつく。



研修医“なんか”っつったな!?




暴れそうになった俺を桐生さんが静かに制した。





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