LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
宗佑に近付いた桐生さんを警戒して、
宗佑はベッドの上で少し後ろに身を引いた。
「大丈夫。このお兄さんは優秀なドクターよ。
あなたの病気は神崎医師が治してくれる」
えっ……。
桐生さんはそう、宗佑に話しかけた。
宗佑は訝しげに俺を睨む。
なんで?
治るかどうかもわかんねぇのに、
なんでそんな確信したようなこと言うんだ?
「あのさ、
その話し方やめてくんない?もうガキじゃねぇし」
「うるせぇ。高校生は十分ガキじゃねぇか」
「神崎医師。……ごめんなさいね。
じゃあ、また後で様子を見に来ます」
桐生さんが俺を目で促して病室を出た。
俺は宗佑を振り返って見つめる。
宗佑は俺を睨みつけて、じっと動かなかった。
こいつ、マジでむかつく。
湧き上がる怒りを抑えて、俺も病室を出た。
廊下をゆっくりと歩き出す桐生さんの後を追って、
俺は口を開いた。
「あの、桐生さん」
「何?」
「なんであいつのこと、甘やかすんスか?」
俺がそう聞くと、
桐生さんは不思議そうな顔をして、それからすぐに笑った。
「黒川くん、神崎医師みたい」
「え?はぁ?」
桐生さんは悪戯っぽく微笑んで言った。
「何言って……っ!!
似てねぇ……似てないっすよ!!」
「ふふ。そっくりだけどなぁ」
何であいつと俺が似てるんだよ。
俺はあんなにわがままで
ムカつくガキなんかじゃねぇっつぅの!!
「それはそうと、神崎医師」
「何だよ!?……何ですか?」
やっぱムカつく。
この女。
確かに俺のことは研修医だからって
馬鹿にはしないけど、
人のこと、ガキ扱いしてるし。
あー。
やっぱこんなの嫌だ!!
窮屈だし。
こんなやつの下につきたくねぇよ。
そう思っていると、
桐生さんは窓の外を見つめて口を開いた。
「黒川くんの執刀医として、手術経験してみませんか?」
「えっ……?」