LAST SMILE ~声を聞かせてよ~







それは突然のことだった。


俺はわけのわからないまま、
窓の外を眩しそうに見つめる桐生さんの横顔を見ていた。



執刀医?


研修中の俺が?


たった2ヶ月しかここにいない俺が?



他の医者は俺を手術室に近寄らせなかったのに、
助手通り越していきなり執刀?




何考えてんだよこの人……。



「私が助手としてつくから、経験してみない?」


「えっ……いや、でもっ」


「自信、ない?」





うわぁ。


なんかいらっとした!!


むかつく……!!



俺は誰よりも優れた研修医だ。


自信がないなんてことはこれっぽっちもないんだよ!!



「あるよ!!……あります」


「そう。なら良かったわ」



桐生さんは小さく微笑んで、再び歩き出した。


いつものように、あの部屋に向かう。


俺はその間、
半ば睨みつけるように桐生さんを見ていた。



何考えてるのか分かんねぇ。この人。


なんか、他の医者よりも対応に困る。


どうしていいか分かんねぇんだもん。


1回くらい怒らせてみてぇよな。


こういう奴見るとさ。



ほんとに何しても怒んねぇのかな?



色々考えていると、
急に桐生さんが立ち止まり、俺はその背中にぶつかった。




「って……。すんません」


「神崎医師、大丈夫ですか?
 上の空で……。これどうぞ」




桐生さんはポケットから何かを取り出して、俺に差し出した。




「なんすか?これ……。飴?」


「ミントは気分をリフレッシュさせるのに一番効果的です。
 神崎医師も良かったらどうぞ」


「ああ、どうも……」




飴って……。


ガキじゃねぇんだから、こんなもんで機嫌直るかよ。


俺は一応お礼を言って、それをポケットにしまった。


ミントっつったよな?


俺、ミントとかスースーすんの嫌いなんだけどなぁ……。




そう思っていると、何かが靴の先にあたった。







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