LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
*
見慣れた部屋に入る。
散らかったままにして出てきたため、
香奈との出来事を思い出す。
くそ。
片付けてから出てくればよかった。
地味にショックを受けてる自分に腹が立つ。
上着を脱がせて、桐生さんをベッドに寝かせた。
桐生さんは落ち着いたように
すやすやと小さく寝息を立てる。
「桐生さん、このまま寝るのはやめてくださいよ?
なんか薬飲んでから……」
「……ねぇ、祐兎」
「えっ……」
ベッドの上の桐生さんはそう呟いた。
起きた?
いや、寝てる……。
また寝言かな。
ていうか、祐兎って……。
桐生さんはこの祐兎って人の恋人だったのかな?
「桐生さん。桐生さん!……はぁ」
ダメだ。起きねぇ。
どうすっかな。
とりあえず部屋に上げたけど、どーしよ。
「祐兎……ごめん。ごめんなさい……」
謝ってる……。
桐生さんは突然魘され始めた。
「桐生さん」
「ごめんね……祐兎」
「桐生さん」
「ごめ……ごめんなさい……」
ほんとに無意識に。
だってあんまりにも辛そうで、悲しそうに謝るから。
だから……
だから……。
「麗華……」
桐生さんの目元を手で覆う。
そっと、桐生さんの名前を呼んであげる。
そうすると、桐生さんの頬に涙が伝った。
―お前が泣いててももう、涙拭いてやれねぇからさ―
「俺が……俺が拭いてやりますから。だから……」
だから、どうか泣かないで……?