LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
☆
ガタっと物音がして目が覚めた。
寝てたのか……。
「やべっ!今何時だ……?遅刻……」
ケータイを探そうとして手を彷徨わせると、
手の中にケータイが置かれた。
「おはようございます。まだ3時ですよ」
「……うぇ!?」
聞きなれた声がして、俺は完全に目覚めた。
なんで桐生さんが……!?
……って、そうだった。思い出した。
昨日の夜、桐生さん家に行ったのに
鍵がなかったから連れてきたんだった。
「昨夜はありがとうございました。
私、体調を崩したみたいで……」
桐生さんはそう言って、
俺が昨夜出しっぱなしにしていた薬のビンを見つめた。
「あ、いや。別に……。
桐生さん、鍵を病院に忘れてきたって言ってたんで」
「鍵……あっ!!」
桐生さんは思い出したように声をあげた。
あらら。
こんな桐生さん初めて見たよ。
結構記憶飛び飛びなんだろうな。
すっげぇ動揺してる。
「ごめんなさい。迷惑をかけたんじゃ……」
「や、いいっすよ。俺、
これを返しにいこうと思ってて」
俺はカバンからCDを取り出した。
なんか、
今がちょうどいいタイミングかなって思った。
黙って返しそびれたし。
桐生さんはそのCDをしばらく見つめてから、
はっとしたように目を見開いた。