LAST SMILE ~声を聞かせてよ~






ガタっと物音がして目が覚めた。


寝てたのか……。


「やべっ!今何時だ……?遅刻……」


ケータイを探そうとして手を彷徨わせると、
手の中にケータイが置かれた。




「おはようございます。まだ3時ですよ」


「……うぇ!?」




聞きなれた声がして、俺は完全に目覚めた。


なんで桐生さんが……!?


……って、そうだった。思い出した。


昨日の夜、桐生さん家に行ったのに
鍵がなかったから連れてきたんだった。


「昨夜はありがとうございました。
 私、体調を崩したみたいで……」



桐生さんはそう言って、
俺が昨夜出しっぱなしにしていた薬のビンを見つめた。



「あ、いや。別に……。
 桐生さん、鍵を病院に忘れてきたって言ってたんで」


「鍵……あっ!!」



桐生さんは思い出したように声をあげた。


あらら。
こんな桐生さん初めて見たよ。



結構記憶飛び飛びなんだろうな。


すっげぇ動揺してる。



「ごめんなさい。迷惑をかけたんじゃ……」


「や、いいっすよ。俺、
 これを返しにいこうと思ってて」



俺はカバンからCDを取り出した。


なんか、
今がちょうどいいタイミングかなって思った。


黙って返しそびれたし。


桐生さんはそのCDをしばらく見つめてから、
はっとしたように目を見開いた。




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