LAST SMILE ~声を聞かせてよ~
「それっ!!どうして神崎医師が……!?」
「あ、すんません。CD借りたときにこれ見つけて、
持って帰ってきちゃって……。
これを返しに戻ったら桐生さんが寝てたから」
まぁ、
返しにいったっていうのは本当だしな。
「そう……。中身、聞いた?」
桐生さんはそのCDを受け取ってそう訊ねた。
うっ……。
そういわれると正直に答えていいのか迷う……。
「え。いや、あの……」
「……正直なのね。本当に」
「あの、すいません……!!」
「謝らないで。
私がすぐに処分しておけばよかったんです」
「え?これ、処分しようとしてたんっすか?」
こんな、
何か深い意味を持っていそうな“遺書”と、
それに答えようとしたメッセージ。
処分するって……なんでだよ。
「もう、必要ないから……」
「それ!!その麗華って人、
桐生さん……っすよね?」
俺が思い切って訊くと、
桐生さんは一瞬黙って、そして小さく笑った。
やっぱり聞かれたくないものだったかな……。
「そうです。これに出てくる
藤堂麗華は私のことなんです」
俺が困っていると、桐生さんは静かにそういった。
やっぱり。
やっぱり桐生さんだ。
でもなんで……
「なんで……藤堂」
「私の旧姓は藤堂なんです。両親の離婚でね」
「離婚……」
「そんなすまなそうな顔しないで。
よくあることでしょ。それに、
私が医大生になった頃のことだから、
そんなにショックもなかったわ」
そうだけど……。
だけどさ、やっぱり離婚って悲しくないか?
この人はなんでこんなに強いんだよ。
こっちが泣きたくなってくる。
「この祐兎って人……」
「……“Blue sky”のリーダー。ギタリストよ」