色のない世界。【上】




「絵里香姉様はよく笑ってくれたわ。
でもそれはどこか悲しそうで、辛そうだった」




いつも花が咲くように綺麗な笑みを浮かべていても、それはどこか儚くて悲しそうだった。




でも小さい頃の私はその理由が知らなくて、聞いてはいけない気がしていつも笑顔を返していた。




「絵里香姉様が"元黒女"であり"欠陥品"と呼ばれていることを知って、声をかけられなかった。
私という黒女が産まれてしまったから、姉様は辛い思いをしている。


どうして黒女として産まれてしまったのだろうと、後悔したこともあった」




私が普通の、黒髪ではない妹として産まれていたら絵里香姉様は悲しい笑みをしなくて良かったのではないか。




私のせいで絵里香姉様は悲しんでいる。




そう思うと私はしばらく絵里香姉様に会うことができなかった。




手すりに置いてある手を強く握る。
その上に重なった温もりは悠汰の手だった。




「あいつが言ってた。


『私が産めない体のせいで美桜が産まれてしまった。
私が黒女になれていれば、美桜はこの世に生を受けなかったかもしれない。
もっと別の形で美桜は産まれて、幸せになれたかもしれない……


美桜は私が産ませてしまったようなもの』だって」




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