エターナル・フロンティア~前編~
此処がアカデミーだということを説明しなければ、何処かの会社の研究施設と間違えてしまうだろう。それほど立派な場所でイリアは勉学に励み、今のところ留年の経験はなかった。
それは当たり前のことであろう、親が科学者として働いているのだからだ。ふと、急にイリアの表情が曇る。その理由は、目の前から苦手なアニスとディアーナが歩いてきたのだから。
「あら、おはよう」
「お、おはよう」
「昨日は、大変だったみたいじゃない」
何処で情報を収集したのか不明だが、二人はイリアが研究室に行っていたことを知っている。そのことに愚痴をこぼす二人は、どうやら自分達より立場が上のイリアを気に入らないらしい。
「いつものことだから」
「いつものこと……ね。ところで、例のテストはやってくれたかしら。私達、待っているのよ」
「それは、まだ」
追試の内容が、メールで送信されていたということは知っていた。しかしイリアは、卒論を仕上げなければいけないという忙しい身分。正直、代わりに問題を解く暇などない。彼女から返された返事に、二人の表情が一瞬にして変わる。どうやら、提出期日が迫っているらしい。
「遅いわね」
「そうよ、私達が卒業できないでしょ」
身勝手な発言を躊躇いもなく言う二人は、どれだけ図太い神経を持ったらこのようになるのかとイリアは思う。そして反射的に視線を外すと、どうしてこのような人物と付き合うようになったのか考える。
このような人物と付き合わなくても、仲の良いクラスメイトはいる。其方と付き合えばいいのだが、どこをどのように間違えたのか。卒業までの我慢と考えていたが、度重なる攻撃に身体が参ってしまう。
「それと、卒論を見せてもらわないといけないんだから。本当に私達の為に、シッカリしてよね」
「その中に、卒論が入っていたりして」
「あっ! 駄目」
二人はイリアのカバンを奪い取ると、勝手に中身を漁り出す。飛び掛りそれを取り返そうと思考が動くが、身体がそれに付いてこない。「何かされるのでは……」そのような恐怖心が、身体を支配していたからだ。それは、一種のトラウマというべきか。彼女の身体に、深く染み付いている。