エターナル・フロンティア~前編~
「これって、卒論よね?」
カバンの中から、一枚のディスクを取り出す。何も記されていなかったが、確かにそれは卒論のデータが収まったディスクである。しかしささやかな抵抗なのか、イリアは答えようとはしない。
「別にいいわ。後で、中身を調べればいいんだし」
「ねえ、他に何かないの?」
「これって、どうかしら」
「珍しい物を持っているわね」
「貰っちゃおうか」
ここまでくると完全に泥棒であり、れっきとした犯罪といっていい。それでも彼女達は人様の物を平気で盗み、自分の物にしようとする。泥棒――いや、彼女達は別の見方をした方が正しい。
追剥――そう、この言葉が正しい。
周囲には大勢の生徒が此方を見ているが、誰一人として止めに入ろうとはしない。この二人の性格を知って敢えて止めないのか、それとも他人に無関心なのだろうか。その時、人垣の中から聞き覚えがある声が響き渡る。その声に、イリアは反射的に視線を向けていた。
「な、何この騒ぎ」
人を掻き分け現れた生徒は、イリアのクラスメイトであった。周囲を見回し、どのような原因で繰り広げられているのか確認する。すると、イリアのカバンを漁っている二人と目が合った。その瞬間、クラスメイトは不快な表情を浮かべ、アニスとディアーナに詰め寄る。
「また貴女達なの?」
「ふん、煩いのが来たわ」
無論、この二人もクラスメイトの関係にあったが、認めたいと思う生徒は果たして何人いるだろう。現にイリアに声を掛けてきた生徒も、嫌悪感を漂わせていた。話に割って入ってきた生徒に対し、周囲は安堵の溜息を漏らす。どうやら、誰かが助けに入るのを互いに待っていたようだ。
「こんなところでかつあげなんて、何を考えているの。全く、意味不明の行動としか思えないわ」
「人を悪者にしないでよ」
「そうよ。私達は、借り物をしているのだから」
それは、明らかに自身の言葉を正当化しようとしていた。その瞬間、大勢の生徒からヒソヒソとした話し声が聞こえてくる。どうやらその図太い神経に、呆れられたというより唖然となったらしい。悪びれた様子のない二人に、周囲が一斉に同調するかのように溜息を漏らす。