エターナル・フロンティア~前編~
「ねえ……ファンクラブって、存在するの?」
「当たり前よ。規約が存在するのだから、あるに決まっているじゃない。イリアは、入会していないの?」
「う、うん。あるとは聞いていたけど、何処で運営しているのかわからなかったから。それに、表に表れないし」
イリアの言葉にクラスメイト全員は満面の笑みを浮かべると、イリアを引き摺り何処かに連れて行く。彼女達が向かう先は、図書室とは明らかに逆方向。何処に連れて行かれるのか尋ねても、誰も目的の場所を答えてはくれない。ただ、イリアは引き摺られるしかなかった。
「到着!」
「此方が、ファンクラブの本部になります。結構、目立たない場所にあるでしょ。大々的に公表しても差し支えはないみたいだけど、ラドック博士に迷惑はかけられないという理由から、こっそりとやっているみたい。でも、人数は凄いのよ。やっぱり、人気があるのよね」
クラスメイトに強制的に連れて来られたのは、ユアンのファンクラブの本部として使用されている部屋。室内は思っていた以上にシンプルで、必要最低限の物しか置かれていない。会員の入会と管理は全てパソコンで管理を行なっているのだろう、しかし今は誰もいない。
「あれ? いつも誰かがいるのに」
「ロックもされていないなんて、本と無用心ね。重要な物を盗まれたら、どうするのかしら」
ユアンのファンクラブは思っている以上に活動内容が広く、会員申し込みの数も半端ではない。その為、本部を取り仕切る生徒は目の回る忙しさを味わうが、今日に限って生徒の姿はない。
仕方がないので、イリア達は生徒が帰ってくるのを待つことにした。入会手続きを行えるのは、一部の生徒のみ。そう、本部を取り仕切る生徒達だ。そして、その生徒は僅か十人。
その生徒達が数百人ともいわれている巨大なファンクラブを仕切っているというのだから、改めてその規模にイリアは驚いてしまう。これだけ巨大な組織となると、アカデミーでの発言権は絶大なもの。
それに比例して、ユアンの偉大な一面を再認識することができる。大勢を惹きつけるカリスマ性というべきだろう。天はニ物を与えずというが、ユアンの場合それに当て嵌まらない。ルックスは完璧で天才。そして地位も名誉も手に入れ、誰に対しても優しく接している。