エターナル・フロンティア~前編~

 ここまで完璧な人間は、まずお目にかかれない。だからこそ、ユアンは絶大なる人気を得たのだろう。女性だけではなく、男性も憧れる存在。ユアンは、全てを手に入れたと言っても過言ではない。

 不満な点があるとしたら何か。そのことを尋ねてみたいイリアであったが、失礼だという感情が先立ち質問はできない。ふと、あることを思い出す。それは、研究所でのやり取りだった。

 能力者と言う存在は。

 不満の点は、これではないだろうか。わかってもらえない能力者の現状。ユアンという人物が動いたとしても、決して良い方向に進むことはない。たとえ全てを手に入れたとしても、物事を思い通りに運ぶ力を持つことはできず悩み苦しむ。ユアンも大勢の人間と一緒だ。

 イリアがそのようなことを考えていると、急に外が騒がしくなる。どうやら、集まっていた生徒が移動をはじめたらしい。いつまでも一箇所にいたら迷惑になると察したのか、それとも注意をされたのか。どちらにせよ、あの人数は邪魔になってしまう。すると複数の足音が、此方に近付いてきた。

「新規加入を希望の方ですか?」

 足音が止まったと思うと、本部を取り仕切る生徒が教室の中に入って来る。見慣れない顔ぶれに訝しげな表情を作りつつも事務的な口調でそう尋ねると、自身はパソコンの前に腰掛けデータ管理の仕事を開始する。その姿は凛々しく、一介のアカデミーの生徒には見えなかった。

「そうです」

「彼女が、入会したいらしいです」

「手続き、宜しくお願いします」

「さあ、手続きよ」

「それでしたら、此方に必要事項を記入してください。それが終わりましたら、手続きを行います」

「は、はい」

「それと、不備はないように」

 パソコンを弄くり、新規加入と書かれたファイルを開く。そしてイリアに席を譲ると、簡単な説明をはじめる。入力内容には個人情報に等しいものが含まれていたが、入力しなければ会員になることはできない。イリアは戸惑いつつも、会員になりたいという気持ちがそれらを打ち消す。

 イリアは時間を掛けて、必要な項目を入力していく。最後の項目を入力したと同時に、本部の生徒に席を譲るように言われた。言われるままに席を立つと、生徒はキーボードの上を滑るように指を動かしていく。それを暫く眺めていると、手続きが終了したことを告げられた。
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