エターナル・フロンティア~前編~
「後で、必要な物は届けさせます」
「は、はい。有難うございます」
「これで、お仲間ね」
「宜しくお願いします」
緊張の影響か、イリアは同年代だと思われる相手に深々と頭を下げてしまう。そんな真面目な態度に相手は口許に手を当てクスっと笑うと、頭を上げるようにと言う。仲間になったので変に気を使わなくていいと言われるが、イリアはすぐに馴れ馴れしい態度は取れない。
「質問をしてもいいですか」
「何かしら」
「ファンクラブって何をしている場所なのか、いまいちわからないのですが。このようなことは、はじめてで……」
イリアの真剣な質問に、全員が一斉に笑い出してしまう。イリアは真面目に質問したというのに、彼女達に笑われてしまう。自分の知識の無さに恥ずかしくなってしまうが、ファンクラブの登録経験がないイリアが何も知らなくても、それはそれでおかしなことはなかった。
彼のファンクラブは人数の割には、活動は穏やかな一面が強かった。表立って「こうだ!」というものは特に存在しておらず「統一感」というものを大切にしていた。そのひとつが「ユアンに、勝手に告白してはいけない」という内容であったが、これは統一感ではなく一種の嫉妬。
「ファンクラブの会員になったのですから、ラドック博士の前では慎みを忘れてはいけません。一人の恥は、皆の恥になってしまいます。ですので、そのことはきちんと守って下さい」
その言葉にクラスメイトが一斉に頷くが、裏を返すとこのような解釈もできた。ユアンの前では淑やかな女性を演じ、その他の人達の前ではどのような態度を取っても構わない。つまり、このような解釈になるだろう。好きな人や気になる人の前では猫を被り、どうでもいい人は適当にあしらう。
だからこそ、ファンクラブの会員は同性に対し厳しい態度を取る。虐めは、日常茶飯事で相手を徹底的に追い詰めていく。ファンクラブとは名ばかりで、要は裏切りを監視したいということだろう。互いに見る目は思った以上に厳しく、そして規約を破った者には――
「わ、わかりました」
意味深な言葉に、イリアは素直に従うべきだと判断する。反論したところで、受け入れてくれないだろう。それに会員全員を敵に回してしまえば、確実に狙われてしまう。一人を複数で虐める。それは言葉で表すことのできない仕打ちで、裏切り者には徹底的に潰していく。