エターナル・フロンティア~前編~
「で、誰にプレゼントを?」
「ふふふふ、よくぞ聞いてくれた」
カディオは含み笑いを漏らしつつ視線をソラに向けると、いきなり首に手を回し引き寄せる。そして、自分の自身の恋愛模様を語りだす。それは一方的な恋心であったが、彼は大真面目であった。
「俺の所属している部隊に、可愛い子が入隊してきたんだよ。それも、俺が好みの……なんだよ」
「一目惚れか」
「そうなんだよ。あの愛らしい笑顔……思い出す度に……いいぞ。話によると、彼女には彼氏はいない。誰かに取られる前に、先手必勝だ! 俺は、頑張るぞ。だから、プレゼントを買う。何事も、第一印象が勝負だというし……これで気に入られれば、万々歳だからな」
「で、こんな店に」
「なあ、俺の恋を応援してくれるかな。応援してくれるというのなら、少し待っていてくれ」
急に顔を赤らめ恋を語る姿は、何とも可愛らしい。しかしカディオが恋愛とは、ソラは信じられなかった。カディオは野性的という言葉が似合い、大食いで尚且つ大雑把。人前であろうと、大声で笑うのは日常茶飯事。このような人物が真剣に恋をするとは――笑うしかない。
「笑うことはないだろ」
「いや、カディオも大人なんだ」
「今までの俺とは違う。彼女を手にいれる為に、必死なんだよ。だから、プレゼントの内容も重要なんだ」
そう言うとソラを開放し、再び女の子が喜びそうな小物を選び出す。その目は真剣というより、完全に血走っていた。どうやら全力投球でこの恋にかけているらしく、一点に集中する。そんなカディオの姿を見てしまうと思わず涙が溢れ、この恋の結末を想像してしまう。
(その前に、性格を直さないと)
勿論、これについては禁句だった。言葉として発してしまったらカディオを傷つけてしまうので、静かに恋の行方を見守る方がいい。玉砕したら慰めてあげようと、心の中で思うソラであった。
(しかし、どんな子なんだろう)
愛らしい笑顔――カディオはそのように言っていたが、それだけで輪郭を想像するのは難しい。人によって、人物の捉え方は違う。カディオの場合「相手が好きだから」という感情が影響して、実際より上に見ている可能性が高い。その為、本当に相手が可愛いとは限らない。