エターナル・フロンティア~前編~
(うーむ、値段が)
商品に表示されている値段に、ソラは驚愕に近い動揺を覚え言葉を失ってしまう。そして、宝石に興味を持っていない人物の大半が、一度は疑問に抱く言葉を思わず呟いてしまう。
ただ、石ころじゃないか。
その言葉に、側にいた二十代前半の男がソラを凝視する。どうやらこの人物もアクセサリーを選んでいるらしく、互いに目が合う。これまた同時に苦笑すると、再び視線を落とした。
(何だ、オレ達だけじゃないんだ)
カディオ以外の同性の仲間がいたことにソラは安堵感を覚え、並べられたアクセサリーを一通り見ていく。宝石が付けられた指輪やネックレス。それに、ゴールドやシルバーの貴金属類。まじまじとそれらを見たことのないソラにとって、その数の多さに驚いてしまう。
(女って、綺麗な物が好きだよな)
いまいち、その心情が理解できなかった。どんなに綺麗に着飾ったとしても所詮それは外見が変化するだけで、ソラは外見をどうこうするより中身を美しくしてほしいと思ってします。特に周囲の女性を見ているとその傾向が強く、イリアもなんだかんだでそれが強い。
(そのイリアに、プレゼントか……やっていることが、矛盾している。まあ、仕方がないことか)
思っていることと動作が一致しないことに、盛大な溜息を付いてしまう。そのことに遣る瀬無さを感じたソラは、カディオのもとに帰ることにした。流石にもう選び終えただろうと思っていたソラであったが、固まっているカディオの姿にまだ選び終えていないと察する。
「もう少し、待っていてほしいな」
「そう言って、何分経っていると思っているんだ。オレだって、限界があるんだよ。疲れた」
「お前だって、こうなる時が来るんだぞ」
「そうなんだ」
「そうなんだって、お前――」
「何だよ」
その軽い返事に、カディオは頭を掻いてしまう。恋愛経験に乏しいということは知っていたが、まさかここまでとは……ソラが置かれている立場もわからないこともないが、これはいけないと感じたカディオは、恋愛に付いて講義をはじめることにした。しかし、ソラは全く聞いてはいない。それどころか「まだか」という言葉を連呼し、カディオを急かす。