エターナル・フロンティア~前編~

「い、いやー俺の話を」

「それは、後で聞く。オレは、店から出たい」

「わ、わかった……これにするよ」

「じゃあ、支払い」

「お、おう」

 半ば強引にプレゼントを決めると、カディオは不満が残る中支払いに行く。もしソラが指摘を行なわなければ、彼は一日中品物と睨めっこしていただろう。そうなると店側にしてみたらいい迷惑で、何より他の客がカディオの発するオーラに引いてしまう。こうなると店側の、損害は大きい。

 暫くすると、支払いを終えたカディオが戻って来る。その手にはピンクのリボンが印象的な箱を持っており、ソラは視線を上げると満面の笑みを浮かべたカディオの姿が視界に映り込む。どうやら嬉しくて仕方がないらしく、そのだらしない笑みは見られたものではない。

「気持ち悪い」

「いいじゃないか。告白前の男は、こういうものだよ。本当に、お前はわかっていないよな」

「カディオだけだと、思ったよ」

「ああ、これで俺の告白を受け入れてくれれば……人生、バラ色。この先、活力を見出せる」

 カディオの妄想の中では、好きな相手と一緒に食事をしている風景が浮かんでいた。グラスを傾け、お互い笑い合っている二人。そして互いに愛を語り、これから先共に過ごすことを誓い合うが、妄想はそれだけで治まらない。その先の人生まで考えはじめ、顔は緩む。

 といって、いつまでも妄想の世界に浸っているわけにもいかない。そう、現実を直視しないといけない。ふと、カディオの視線がソラに向けられる。すると、盛大な溜息がつかれた。

「な、何だよ」

「野郎との飯は寂しいな」

「自分から誘っておきながら、何を言う」

「あれは、お前が寂しい日々を送っていると思って。それで、誘ってやったんだよ。優しいだろ?」

「大きなお世話だ」

 叫ぶように言い返すと、ソラは踵を返し建物から出て行こうとする。するとカディオの何気ない一言が、彼の動きを止めた。そう、重要なことを忘れていた。それは、イリアに送るプレゼンを買うということだ。しかし、いまだに何を買っていいのかわからないでいた。
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