エターナル・フロンティア~前編~

「女性が、そのような言葉を使ってはいけない」

 そのように言い、相手を諭していく。彼女にとってユアンは憧れの対象なので、そのように言われたら素直に従うしかない。何より、見られたくない人物に見られてしまった。衝撃は思った以上に大きく、彼女の顔から血の気が引いていく。最終的には、真っ青になった。

「そう、女性は淑やかの方がいい」

 注意を受けた女子生徒だけではなく、周囲にいた女子生徒全員が同じ反応を見せる。一瞬にして、周囲から音が消える。誰もが心当たりがあったのだろう、皆恥ずかしそうにしていた。

「凄いな」

「いつもこのような感じだよ」

「はあ、羨ましい」

 異性だけではなく同性も引き込むユアンに、カディオは素直な感想を語る。だがソラだけは表情を変えず、ただ目の前の光景に視線を向けているだけ。この光景は、見慣れていた。

「人気者は、違うね」

「カディオも尊敬しているんだろ?」

「尊敬というか、凄いと思っているだけだよ。ほら、若くして高い地位にいるというところが」

「科学者には、かわりないよ」

 能力者にとって科学者は、一種の天敵といっていい。ソラは科学者という生き物に激しい嫌悪感を抱いているが、一部の人間は異なる。タツキのように、信頼できる人物も存在するからだ。

「俺がラドック博士を尊敬していると言ったら、お前はどうするのかな? 嫌がるだろうな、きっと」

「別に、大丈夫だ。別に、裏側が変わるわけではないんだし。カディオは、カディオのままだ。それに、職業は今と同じだろ? このようなことで転職は考えられないし、何より難しいよ」

 カディオは科学者ではないので、そこから何かを得るとしらた微々たるもの。その道の者として尊敬しているというのなら何らかの影響があるに違いないが、彼はユアンではない。だから、全てを真似することは不可能に近かった。何より、互いに持っている物が違う。

 尊敬しているので、対象となる人物に近付きたい。だが、カディオの場合は「尊敬」と言っても、冗談に近かった。女性に好かれ、浮名を流したい。いわゆる人間が持つ「欲」の面で尊敬しているのだ。それ以外は関係なく、それに能力者を虐めるほど零落れてはいない。
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