エターナル・フロンティア~前編~

「これからオレの家でコーヒーを飲む時は、砂糖とミルクを入れない……というのは可哀想だから、大量に入れるのは禁止。今回のことは、覚えておくように。わかったよな、カディオ」

「……了解」

「で、また飲むの?」

「いいのか」

「量が少ないのなら、許そう」

「うっ! そ、それは……」

 そのように言われて素直に受け入れられるほど、カディオはコーヒーに関して譲れないものがあった。それはソラのようにブラックでは、飲むことができないからだ。苦いという理由から砂糖とミルクをたっぷりと使用しているらしいが、苦手なら飲まなければいいという考えもある。

 カディオは、コーヒー自体は嫌いではない。だからこそ砂糖とミルクで味を調整し、飲んでいるという。成人している人間が、苦い飲み物が苦手――まだまだ「お子様」であった。

「じゃあ、ソラ頼む」

 突き出されたのは、床に落としたマグカップ。いくら綺麗にしているとはいえ、床に落ちたマグカップをそのまま使用するのは、衛生上いいものではない。このような鈍感さが、タフな身体を生み出している。

 ソラは渋々それを受け取ると、無言のままキッチンに向かう。そして、マグカップを綺麗に洗いはじめた。後ろから「洗わなくていい」というカディオの声が聞こえるも、ソラは無視をする。

「お前はいいが、オレは嫌なんだよ」

「潔癖症だな」

「潔癖症じゃない。普通だ」

 洗い終わったマグカップを手渡すと、自分でコーヒーを淹れるように言う。その言葉にカディオは、渋々ながら新しいコーヒーを淹れはじめた。今度は、砂糖とミルクは少なめに。

「話は戻すけど、ふられたんだ」

「そ、そうなんだよ」

「結構、早かったね」

「それを言うな!」

 突然の話の変更にカディオは、慰めてほしいという形でソラに飛び付こうとしていた。しかし、先程の件が脳裏に過ぎる。それにより、飛び掛る寸前で固まってしまう。そしてゆっくりとした動作でマグカップをテーブルに置くと、近くに置いてあった椅子に腰掛けた。
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