エターナル・フロンティア~前編~
イリアもその中の一人であり、尊敬していなければユアンを見て恥ずかしいとは思わない。しかしその尊敬の裏側に恋心が含まれているということは、イリアは気づいてはいない。
「え、えっと……どれでしょうか?」
恥ずかしさを隠すように、話の内容を元に戻す。このまま話を続けていれば、イリア本人がファンクラブの会員だとバレてしまうからだ。この件に関しては、普通の人間と何ら代わりがない。
イリアは、ユアンを尊敬している。その為、ファンクラブに入っていることを知られたら、どのように対応していいのかわからなくなってしまうので、この件に関しては口をつむぐ。
「これを開いてくれるかな」
画面上を指差し、ポンっと叩く。「遺伝子構造と潜在的能力について」と書かれていたそれは、能力研究のレポート。ふと同時に、イリアは自身が行おうとしているジャンルに気付かされた。
能力研究とは。
抑えきれない興奮の下、促されるままイリアはそれをクリックする。すると、ズラリと専門用語で書かれた文章が並ぶ。それは能力研究をしている科学者でないイリアにとっては、難しい内容だった。読み上げるだけなら何ら問題はないが、感想は述べることはできない。
「……力を使える能力者は、遺伝子レベルで我々と違う。そのような内容が書かれている。簡単に説明するとね」
内容を理解できないイリアに、優しく説明していく。急な発言に驚いたイリアはユアンの顔を一瞥すると、再びパソコンの画面に目を落とす。そして、自身がこれに参加していいのか迷ってしまう。
そのことをユアンに尋ねると、詳しく話さなかったことを詫びた。それに対しイリアは首を左右に振ると、自分が尋ねなかったのが悪いと言う。ユアンを悪者にしてはいけないという想い。それが空回りをして、落ち着いてきたと思っていた感情を再び高ぶらせてしまう。
「ランフォード君は、悪くはない」
「いえ……本当は、あの時に聞かなければいけなかったのです。能力研究のことだとは、知りませんでしたから。てっきり、別の研究だと……す、すみません。早とちりをしていました」
あの状況で「能力研究」と判断するのは、まず無理だろう。それにイリアが行っている研究は、全くの別ジャンル。微量の説明から適切な判断を下すのは、思った以上に困難なもの。それに人間は神ではないので間違いは当たり前であったが、イリアはそれを許さなかった。