エターナル・フロンティア~前編~
それにどのような意味があるのかと思いつつ、イリアはユアンの指示だということで素直に従う。後ろの席に置いてあったカバンからノートパソコンを取り出すと、電源スイッチを押す。だが立ち上がったと同時に画面に表示されたのは、パスワードを入力する画面であった。
「あ、あの……」
「ああ、そうだった。画面を此方に、向けてくれると有難い。盗まれたら大変なことになってしまうから、パスワードの設定をしていた。と言っても、それほど重要なデータは入っていない」
「ご謙遜です。博士は私達では考えられないような、立派な研究をなさっていますから……」
「そんなことはない。ところで、パソコンを――」
「は、はい」
イリアは、慌ててノートパソコンをユアンの方向に向ける。ユアンは器用に片手でパスワードを打ち込むと、再び画面をイリアに向けた。その瞬間、画面に表示されたアイコンの数に驚く。それは天才と言われるユアンの知識の高さを表し、様々なジャンルに精通していることを教えてくれた。それらを見た時、ユアンが別の世界の人物だということに改めて気付かされた。
「……凄いです」
「どうした?」
「これ全部、レポートですか?」
「たいした内容ではない。それに書いてある内容は、カイトスなら誰でも知っていることだ」
「そんなことは、ありません」
先程まで緊張で身体が強張っていたイリアであったが、今は普通の落ち着きを取り戻している。それにより、ユアンがどのように人気があるのかを懸命に語っていく。それはある意味で、必死だ。
「それは、知らなかったな」
「ご存知、なかったのですか?」
「そのようなモノは、表に出ることは少ない。それにアカデミーに存在するとは、思ってもみなかった」
「それだけ、人気があるのです」
「嬉しいね」
流石のユアンもファンクラブの存在まで、知らなかったようだ。その為、苦笑いを浮かべながら頭を掻いている。ユアンは「自分は、そこまでの存在ではない」と謙遜しているが、現に尊敬している人物は多い。ユアンは、それだけの実績を持っている科学者であった。