エターナル・フロンティア~前編~
「買い物か食事か……」
「それ、寂しいわよ」
「タツキは、何か考えているのか?」
「海を見に行く」
「おい、時期を考えろよ」
この寒い時期に、好き好んで海に出掛ける者は少ない。それに、今は雪が降る季節。油断すれば、風邪をひいてしまう。それだけタツキ達が暮らしている地方の冬は、厳しかった。
「ソラ君は、平気よ」
「まあ、そうだな」
ソラが以前に暮らしていた場所は厳しい冬が有名で、毎年のように大量の雪が積もり春が訪れるのが遅い。数十メートルの雪の影響で外に出ることが難しく、人間が生きるには不都合な場所と言われている。
そのような場所でソラは暮らしていたので、多少の雪は物ともしない。タツキはそのことを言おうとしているのだが、クリスにしてみたら困ってしまう。いかんせん、寒いのが苦手。
クリスは、この惑星の生まれではない。別の惑星から仕事の為に、移り住んできた。そしてクリスの故郷の惑星は温暖で過ごし易く、よってこの寒さはいつまで経っても慣れない。
流石に寝込むことはないが、冬に入ると体調を崩すのは決まってクリスだった。それは過労が重なってのことだろうが、体調を崩したのは自己責任。つまり、上は優しい言葉ひとつかけてくれない。
そのことを涙ながらに愚痴るクリスであったが、タツキは笑って聞き流していた。こう見えて、タツキは体調を崩したことは滅多にない。だからクリスの苦労は、殆んどわからない。
「タフだよな」
「あら、貴方と一緒にしないで」
「そういう意味でのタフじゃない」
野獣と呼ばれているクリスであったが、病気に関しては繊細な身体を持っている。逆にタツキは、体内に侵入したウィルスに簡単に打ち勝ってしまう。人間離れしたとんでもない免疫機能を持っているが、本人は気付いていない。だからこそ、雪が降っていようが海に行きたがる。
身体の弱い人間であったら、冬の海に行ったら間違いなく風邪をひいてしまう。海辺に舞う潮風は、肌を突き刺すように冷たい。軽い風邪ならまだいいのだが、それが肺炎に発展してしまったら数週間の入院になってしまう。そうなってしまったら、いい笑いものだろう。