エターナル・フロンティア~前編~

 そのことを口には出さなかったが、タツキは態度でそれを示す。それを感じ取ったクリスは、ウエイトレスが持ってきたアイスティーに視線を向けつつ、ウエイトレスに礼を言う。

「ねえ、何処か行かない?」

「どうした、急に」

「行きたいのよ」

「休みが取れたらな」

「無理にでも取りなさい」

「また、勝手な」

「いいじゃないの」

 クリスは言葉では否定しているが、心の中では「嫌だ」という感情はない。それを証明するかのように口許を緩めながら、ひとつの提案を出す。それは、他の人物も連れて行くということであった。

「誰?」

「ソラのことだ」

 その名前にタツキは目を丸くするが、瞬時に嬉しそうに微笑みだす。タツキにとってソラは、可愛い弟といっていい。自分が守るべき存在であり、何より彼の幸せな人生を望む。これは、一種のブラコンというものか。そのことも知っているクリスだからこそ、この提案した。

 それは、見事に的中する。わかり易い性格であったが、クリスは笑うことはしない。何故、こうなってしまったのか――その理由は、痛いほどわかるからだ。あれを見れば、そうなってしまう。

「いいわ」

「否定は、しないよな」

「勿論よ」

 ソラが絡むと、タツキはいつもこのようになってしまう。だからこそ、計画が立てやすい。たとえソラが不機嫌な顔をしたとしてもタツキは無理に連れ出し、自分のペースに持っていく。

「何処へ行く?」

「そうね。冬は、行くところが決まってしまうわ」

「できたら、他の惑星(ほし)は止めてくれ」

「わかっているわよ」

 仕事の関係上、クリスは近い場所を選ぶ。科学者の休暇――特に能力を研究している者は、取るのが難しい。研究の対象は人間で、特に行っている行為に関係していた。知らない者が聞いたら首を傾げてしまうが、それは幸せ者の反応だろう。そう、あの光景を知らない。
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