エターナル・フロンティア~前編~

「なら、何処へ行く?」

「まだ、決めていない」

「こういうことは、目的地が決まってから言ってほしいな。此方の都合というのもあるし……」

「でも、賛成したわ」

 自分中心で世界が回っている――そう取れる発言に、クリスは苦笑いを浮かべていた。全てから開放され、自由奔放な性格へと変化してしまったタツキ。それは良いことなのだろうが、クリスにはいい迷惑。

「まあ、そうだな」

「ほら、認めたわ」

 共に働いていた頃は、このような台詞は言わなかった。常に真面目な一面を見せ、自分にも他者にも厳しい存在だった。それがこのようになってしまったとは――ただ、笑うしかない。

 その時、クリスの携帯電話が鳴り出す。バイブ機能にしていなかった為に、店内に響き渡る着信メロディー。その音にクリスはピクっと身体を震わせると、恐る恐る着信相手を確かめた。

「呼び出しだ」

「行っていいわ。支払いは、しておくわ」

「すまない……助かる」

 そう言い残すと、クリスは駆け足で店内から出て行ってしまう。その間も携帯電話を離さず、気まずい表情で会話を続ける。どうやら無断で外出したことに、相手は怒り心頭の様子。

 クリスは優秀な科学者であるが、地位は低い。だから何かトラブルが発生した場合、このように呼び出されてしまう。無論、断ることはできず、時に雑用さえも押し付けられる始末。

 彼の後姿を眺めていたタツキは、徐に溜息を付く。あの時から変わることのない忙しさに、複雑な心境を抱く。そしてこのような忙しさの時、何が起こるのか――それは、理解していた。

 だからこそ、タツキは再び溜息をついてしまう。しかし、このことは誰にも相談はできない。能力者関して相談ができるのは、今のところクリスだけだろう。それ以外は、いない。

 だが、そのクリスは――

 ある一定の距離を置かなければ、互いの立場が危うい。何よりクリスは、現場で仕事をしている。このことにより物事が悪い方向へ働き、クリスから職を奪うわけにはいかない。どのような仕事の内容であれ、クリスにとっては大切な仕事だ。それに、彼等の給料はとてもいい。
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