エターナル・フロンティア~前編~
だが、タツキはクリスの想いを知らなかった。
◇◆◇◆◇◆
大量の詰まれた食材を目の前に、クリスは腕を組みながら悩んでいた。料理を作るといったのはいいが、どのようなレシピにすればいいのか決まっていない。適当に作る――しかし、タツキの身体を考えれば適当に作ることはできず、たまにはまともな料理を作らないといけない。
二人が結婚をしていると仮定した場合、クリスが主婦業を担っているだろう。そのように思ってしなうほど、クリスは繊細な一面を持つ。外見や日頃の生活は大雑把だが、主婦関係は違う。
果物を手に取ると、新鮮かどうか確かめていく。その目付きは、完全に主婦の領域。流石自分で食事を作っているだけあって、妥協は許されない。それが仇となり、なかなか決まらない。
「お久し振りです」
「うん? ああ、久し振り」
その時、誰かがクリスに声を掛けてきた。一体、誰だろう――反射的に声が聞こえた方向に視線を向けると、彼の前に立っていたのはソラで、どうやらクリスと同じく買い物に来たようだ。
「こんな場所で会うのは、珍しいな」
「確かに、そうですね。ところで、その量は――」
「タツキに料理を作ると約束して、その買出しだよ」
二人の関係を知っているソラは、苦笑いしかできない。クリスは、完璧に尻に敷かれている。可哀想なことにこれが現実で、今回ソラは不憫すぎるクリスの味方をすることにした。
「手伝います」
「いいのか?」
「お世話に、なっていますので」
「嬉しいな」
一人で調理するのは大変と考えていた中で現れたソラは、まさに天の救いといっていい。もし周囲に誰もいなければ、抱き締めていただろう。それほどのソラの言葉は、クリスにとって有難かった。
それにクリスは、ソラの料理の腕前を知っていた。過去に数回、彼の料理を食べた経験があり、その時の感想は一言。美味しい――この感想しか、思い付くことができなかった。これでソラが女性であったら多くの異性から求婚を申し込まれるほど、家庭面のレベルは高い。