エターナル・フロンティア~前編~
料理の天才の二人。イリアの周囲に集まる天才に、勝手に口許が緩んでいく。人間という生き物は、常に美味しい物を求めてしまう。よって、ユアンの誘いは甘い誘惑に等しかった。
「でも、ソラが……」
「無理に、連れて来るといい」
「宜しいのですか?」
「対決はしたい」
真剣な表情を浮かべるユアンに、イリアはクスクスと笑ってしまう。ユアンは常に冷静で、物事に動じない性格だとイリアは認識していた。その人物が、勝負を挑みたいと言っている。
その意外な一面に、ユアンの知られざる面を見る。だが同時に、自分だけの秘密に心の中で微笑む。
「が、頑張ります」
「ああ、頼む」
「美味しい料理を期待しているのですが……あっ! 勿論、ラドック博士の腕前は知っています」
「それは、わからない。ランフォード君が持って来たシフォンケーキは、本当に美味しかった」
無論、それは正直な感想であった。本来、男の料理は大雑把というイメージが強い。そして、必要以上に金を掛けていく。しかし、ソラ手作りのシフォンケーキは違う。素朴ながら美味しい。メラメラと対抗意識が芽生えていき、この瞬間ソラはユアンのライバルと化した。
「後で、連絡しておきます」
「ああ、宜しく」
「本当に、楽しみです」
「で、ランフォード君は料理を作らないのか? 今回のシフォンケーキは、幼馴染が作ったのだろ?」
「えっ!? ああ……」
戸棚を開き紅茶のティーパックを取り出しつつ、ユアンがそのように話し掛けてくる。その質問にイリアの心臓は、激しく痛く鼓動した。クラスメイトの指摘通り、イリアの料理経験は無いに等しい。全て母親がやってくれるので、イリアが家事を行う必要がないからだ。
起床後、一階へ行けば朝食が用意されている。そして汚れ物は洗濯機の中に入れておけば、夕方畳んで部屋の中に置かれている。更に夕食は、椅子に腰掛けていれば自動に出てくる。イリアは、特に動く必要はない。それだけイリアの母親は、完璧に家事をこなしていた。