エターナル・フロンティア~前編~
しかし、ユアンの名前が引っ掛かる。
彼は、裏表が激しいからだ。
今回、ソラを助けた。
だが、よくよく考えれば表面上の理由で、裏では実験を行っていた。彼は行動と言動で救いを行ったのではなく、薬を用いた。現在の地位と権力を利用すれば、薬を使わなくとも部下達を顎で使える。
それなのに、用いた。
次の瞬間、毒付く。
タツキとクリスが言っていたように、本質が読めない人物。彼に本音と建前という言葉は当て嵌まらず、時として裏が表と化す。現在、ユアンの全てを把握している人物は誰一人としていない。しかし要注意人物としては間違いなく、遠回しで危険な相手だと伝えていく。
それに、困ったことが発生したらタツキに頼めばいいと言う。イリアは、タツキに教えを請うと願っている。
なら、最良の方法だ。
ソラもイリアがユアンではなくタツキに頼ってくれた方が、精神的に安心感が得られる。また彼女の動向も、把握できるからだ。そして何かがあった場合、救いの手を差し伸べられる。できるものなら、表の世界で生きてほしかった。だが、彼女は裏の世界へ行くことを選択する。
なら――
タツキという表も裏も知っている人物に、正しい道を教えてもらえばいい。彼女は、信頼がある。
「なあ、イリア」
「何?」
「いや、その……買い物に行こう」
「うん」
彼女が、能力研究の道に進む。
なら、彼等が行っている本質部分の回答を求めてもいいと思っていたが、言葉が外に出ない。
思考が、正しく働いてくれない。それに、身体が「聞いてはいけない」と、拒絶反応を示している。
彼が聞きたい質問内容。
「人体実験ができるか」というもの。
勿論全員が全員、そのような実験を行うわけではないが、ユアンが関わっている以上わかったものではない。彼はメスを握り、含み笑いを浮かべている。そして、肉体を切り刻む。