エターナル・フロンティア~前編~

 影響力は強すぎる。

 しかし、言うに言えない。

 やはり、タツキの力が必要だった。

 ソラは自身に言い聞かせるかのように頷くと、イリアをネットで探し出した店に連れて行く。

 並んで歩く二人。

 途中、ソラが口を開く。

「卒業後、仕事開始は早い?」

「少し、間があるわ」

「なら、タツキのもとへ」

 どうしてタツキのもとへ行くのか理由を話すことはしないが、今までの会話の流れで簡単に意味を悟ることが可能だった。イリアは無言で頷くと、従うという素振りを取る。それに彼女自身、タツキに様々なことを聞きたいと思っていた。また、顔見知りでも挨拶は必要だ。

 これから先、互いに進む道は交わっていく。

 ソラが寄り添うのか、それともイリアがそうなのか。

 どのような運命が待っているか、現時点で判断を下すことはできないが、二人は互いを想い合う。

 世の中は広いが、考え方は狭い。

 それが、一部の人間を追い詰めていく。

 勿論、いいか悪いかは世間が決めることで、彼等が回答を導き出すのではない。それに言った瞬間、罵倒が飛ぶ。

 口をつむぎ、気付かれないように生きる。

 これから先も、ずっと――

 無意識に、指が絡み合う。

 肌から伝わる体温に、心が締め付けられる。

 会話が続かない。

 でも、二人はそれで良かった。

 こうやって歩いているだけで、幸せを感じることができたからだ。

 しかしソラは勇気を出し、口を開く。

 やっとつむぎ出した言葉は、感謝の言葉。

 有難う。

 声音は空中に霧散する。だが、イリアの耳には届いた。

 そしてイリアも言葉に出す。

 有難う――と。
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