エターナル・フロンティア~前編~
今肉体が存在していたら、顔色が悪いだろう。だが脳味噌だけの今、相手の反応はわかり難い。すると何を思ったのか、脳味噌を突き刺していた針を抜く。甚振ることに飽きたのか、針を短く戻し内ポケットに仕舞う。だが、それは直接的な攻撃を止めただけであって、間接的な攻撃は続く。
「何故、この部屋が生まれたのかご存知ですよね。切っ掛けは、貴方のような方なのですから」
『……何を言いたい』
「欲と傲慢の集まり……と、言いたいのです」
『それは、上が……』
「そう、上が」
実験と研究には莫大な資金と、高性能の機器。また、恵まれた環境が必要不可欠。ユアンが所属している場所は、それらが全て揃っている。だが、上が口煩く言ってくるのが難点だ。
彼等は、実験と研究を懸命に行なっている者の気持ちを理解していない。ただ結果を求め、自分が満足する結果を得られないと罵倒する。それが、自分達の役割といわんばかりに。
「研究の意図は?」
『……知っているだろう』
「ええ、表面上」
『嘘をつけ』
「知っていましたか」
義父の言葉に、ユアンはクスクスと笑う。リダードが言ったように、彼は嘘をついていた。高い地位に就き、裏の深い部分の事情も把握している。尚且つ、出資者相手に圧力を掛ける。
その人物が、把握していないわけがない。義父は、その点を的確に指摘していく。鋭い指摘にユアンは折れ、珍しく饒舌に話していく。一種のストレス発散というべきか、まさに立て板に水だ。
「古今東西、権力者は己の権威が末永く続くことを願うもの。それに伴い、研究も行なわれる。しかし生身の肉体の研究に対し、同等の物で研究を行なわないと正確なデータを得られない。と言って、簡単に手に入れられるものでもない。動物実験では、不十分ですからね」
其処で一旦言葉を止めると、再び口を開く。
「人間は同じ人間に対して非道な行動を行なった場合、口煩く言ってくるもの。しかし相手が違う場合、その言葉は別の意味に変化する。僕は、そのような人間は嫌いです。だって、同じ人間じゃないですか。それに昔と違い、ひとつの惑星(ほし)の中の出来事ではないというのに」