エターナル・フロンティア~前編~

 ユアンは一度、興味本位で彼等が集まり言い合っている場所を覗き見た。しかし嫌悪感が襲い掛かり、その場所を後にしたという。それだけ独特の雰囲気が漂い、鉄の精神を持つユアンを退散させた。

 あの場所は、言葉で表現するのは難しい。様々な物が入り混じり、独特の状況を生み出している。

 漂う物は粘り付き、実に重い。

 また、言葉にオブラートで包まれておらず直接的。どれもが鋭い切っ先を持ち、利用者に突き刺さる。言葉という目に見えない物なので、肉体は傷付くことはないが、精神を痛める。

 勿論、血は出ない。

 人間は肉体を痛め付けられるより、精神を痛め付けられる方が相当堪える。中には、命を奪う。レナはユアンを悪の象徴のように思っているが、誰もが心の中に悪魔を住まわせている。

 それが表に出るか出ないかの問題で、あの場所に集まり自由に言っている人物は、悪魔が見え隠れしている。

 だが、本当の意味で目覚めていない。目覚めていないからこそ、大きな争いに発展していない。

 それは手を出し出血が伴う争いではないが、表面に出ない影での争いは今も続いているのだった。

「貴方の言葉とは思えないわ」

「買い被り過ぎです」

「私は、高く評価しているもの」

「それは、どちらの面で高く評価しているのでしょうか? いえ、聞かなくてもわかります」

 其処で一回言葉を止めると、再び言葉を続けた。

「それに、現在の状況を作った理由と同じです。彼等の捌け口の場所を奪ってしまうと、何が起こるかわかりません」

 流石にそのように言われると、レナは反論の言葉を失う。彼女も、人間が持つ負の部分の強さを知っている。そしてそれが暴走した時、どれだけの破壊力を出すかもわかっていた。

「だから、何も……」

「ユアン?」

 今、彼は胸中を吐露しようとしていた。だが途中で気が変わったのか、別の方向に話を持っていく。それは、レナが科学者を目指す理由だった。今までとの話の流れから考えて、どうしてこの流れに行き着いたのかは不明だが、純粋にユアンの好奇心ともいえるのだった。
< 428 / 580 >

この作品をシェア

pagetop