エターナル・フロンティア~前編~
今日の予定は、数日前から知っている。簡単に説明すると、実験の付き合い。それも、相手はユアンではない。
ユアンは多少、手加減を加えてくれる。「殺してはいけない」ということをわかっているのだろう、ギリギリの位置で止めてくれる。だが、他の人物の場合は下手すると理性がぶっ飛ぶ。
一体、どうなるのか――
ソラは、溜息を漏らす。
勿論、過去の経験で自分の身に起こる結果がわかっている。わかっているが、慣れる経験ではない。
今日は、何を行なうのか。ソラは澄み切った青空を見上げると、吹き抜ける風を全身に受け考え込む。
何故。
一瞬、疑問の言葉が浮かぶ。だが、それが無意味なものとわかったのか、頭を振り歩き出した。
向かうは、最寄の駅。しかし慣れない土地なので携帯電話の画面に地図を表示し、それを見ながら駅に向かった。
その時、見慣れた形と色の車がソラが歩いている歩道の横に停車した。と同時に窓が開き、これまた聞き慣れた声音が響く。声音の主は、カディオ。急な友人の登場に、ソラは苦笑してしまう。
「お前、何でこの場所にいるんだ」
「お前こそ、家はこの辺りじゃないだろう?」
「別にいいじゃないか」
何か言い難いことを隠しているのだろう、何処かオドオドとしており声音が震えている。何ともわかり易いカディオの態度にソラは口許を緩めると、その点を突いて聞き出そうと思うが、そのようなことをしている暇はない。ソラはヒラヒラと手を振ると、先を急ぐと言い歩き出す。
「まて、乗せていく」
「いいのか?」
「今日は、研究所に行く。というか、呼び出しされたんだ。上からの命令で、俺を指名してきた」
「何だ、それ?」
「わからない。という訳だから、乗れ」
彼の言葉に頷き返すとソラは助手席のドアを開け乗り込み、シッカリとシートベルトを締める。しかし、なかなか車が出発しない。ソラは訝しげな表情を作りカディオに視線を向けると、どうして車を出さないのか尋ねる。その言葉にカディオは人差し指を左右に振ると、ソラがこの場所にいた理由を逆に尋ねられた。