エターナル・フロンティア~前編~
調理に使用していた道具を洗い片付けると、タオルで拭く。その後、レナの私室の前に向かった。
勝手に部屋に立ち入るのは、失礼に当たる。ソラは閉められたドアの前に立つと、小声で感謝の言葉を伝えていった。
有難う。
楽しかったです。
また、いつか――
お元気で。
数々の言葉が、紡がれる。ソラにとって信頼が置ける人物が少ないので、心の底からレナに対して礼を言う。
その時、ソラの脳裏に悪い内容が過ぎる。何故、今このようなことが過ぎったのか、不思議で仕方がなかった。同時に、ブルっと身体が震える。そして、それを振り払うように頭を振った。
(それは……)
彼が思ったこと――それは、絶対にあってはならない。いや、ソラ自身は決して望んでいない。
レナの死。
彼女の年齢を考えると、数年後には死を迎えるだろう。だが、一日も長く生きて欲しいと願う。
切ない考えによって俯いてしまったソラであったが、顔を上げ真っ直ぐな瞳でドアを見詰めると、深々と腰を折る。そして顔を上げると同時に踵を返すと、帰る支度をする為に二階の部屋に戻った。
一定のリズムを刻み、徐々に音が小さくなっていく足音。するとタイミングを見計らったかのように、ドアが開きレナが姿を現す。そう、先程小声で囁いていた言葉を全て聞いていたのだ。
「……有難う」
ふと、其処で言葉を止める。
「そして、御免ね」
二階に登る階段がある方向に視線を向けると、彼女も消えそうな声音で囁き目元が濡れていた。
ソラは支度を終えると、レナの顔を見ずに彼女の家から出て行く。玄関から出ると同時に一瞬振り返るが、時間が迫っているので感慨に耽っている場合ではない。彼は大きく頷くと駆け出し、駅に向かう。朝の清々しい空気が美味しい。ソラは何度も深呼吸を繰り返すと、これから自身の身に訪れる出来事を愁いだ。