エターナル・フロンティア~前編~
そして出した答えは、上司に従うだった。
「宜しい」
「で、俺は……」
その言葉に、相手の瞳が怪しく輝く。裏が含まれている瞳の輝きに、カディオの顔を歪ます。
何か、悪いことを考えている。
本能が、カディオに訴えかけてくる。しかし、それが“何か”というのは、明確にはわからない。それが逆に不安感を強調し、カディオの身体を震わす。また、心臓が激しく鼓動する。
「観るか?」
「何を……ですか?」
「実験だ」
刹那、カディオは目を見開いた。この瞬間、上司の目が怪しく光った理由を悟る。と同時に、怒りが湧き出た。
「どうだ?」
「……遠慮しておきます」
「そうか。残念だ」
誘いに乗ってこないことに、相手はやれやれと肩を竦める。態度から察するところ、実験の光景を眺めるのは最高の娯楽といいたいのだろう。だが、いい趣味ではない。寧ろ悪趣味といっていい。
「相手は、ソラなのですか」
「勿論だ」
「では、尚更お断りします」
誰が好き好んで、親友が苦しんでいる光景を眺めなければいけないのか。カディオは強い口調で断ると、真っ直ぐな瞳で自身の上司を見詰める。部下の強情な性格に態とらしい溜息を付くと、ひらひらと手を振った。
「もういい、行け」
「はい」
その言葉に深々と頭を垂らすと、顔を上げると同時に踵を返しカディオは部屋から出て行く。部屋の中に響く、ドアが閉まる音。それに合わさるように、舌打ちの音が響いていた。
部屋から出たカディオは、明らかに機嫌が悪かった。まさか好意で行なったことが、このような悲惨な結末に繋がるとは予想もしていなかったからだ。
ソラを嵌めてしまったことに、自己嫌悪に陥る。しかしどちらにせよ、ソラは実験の対象にされてしまう。彼はこの場所に来る予定であって、カディオと出会い彼に連れてこられたのは全くの偶然だったのだ。