エターナル・フロンティア~前編~

 視界が悪い中、覚束無い足取りで歩いて行く。その時、生暖かい物体に鼻先をぶつけてしまいその場で尻餅を付いてしまう。突然の出来事に子犬は驚くが、プルプルと顔を震わせながら立ち上がると、視線を上げ正体を探る。

 視界の中に入ってきたのは、十代代後半の人間。眠っているのか硬く瞳を閉じ、椅子に凭れ掛かっている。

 子犬の目の前にいる人物の正体はソラ。カディオと別れた後この部屋に連れて来られ、逃げ出さないように薬を投与されている。投与の量が多かったのか何処かぐったりとしていた。

「お前は……」

 ソラの声音に、子犬の身体が反応を示す。自分の目の前にいたのが、苦手の人間。しかし今まで出会ってきた人間が発している雰囲気が違うことに気付いたのか、子犬はソラの脚に顔を摺り寄せた。

 可愛らしい子犬の仕草に、ソラの口許が緩む。そしてだるい身体を起こすと、両手で子犬を掴むと自身の太股の上に載せ身体を擦る。また子犬のことを気に入ったのか、鼻を突っ突く。

 人間は冷たく、暴力的で怖い生き物。悪い印象の方が強かったが、ソラが発する優しさに徐々に惹かれていく。

 この人なら――ソラを信頼できる人間と判断したのか、子犬は手に擦り寄り指を舐めはじめた。

「一匹か?」

 子犬の飼い主は、何処か――

 何故、一匹なのか。

 それ以前に、何故子犬がいるのか。

 様々な思いが巡る。しかし子犬が人語を喋れるわけではないので、どうしてこの場所にいるのかわからない。

 その時、子犬の耳がピクっと動く。それに続くようにソラは目を細め、真っ直ぐ目の前を見詰めた。

「うん?」

 ソラの目の前に現れたのは、子犬を発見した科学者の男。男は子犬がソラと一緒にいることに最初は目を丸くしていたが、すぐに何事もなかったかのように振る舞いソラの前へ行く。

「時間だ」

 男の言葉に、ソラの眉が動く。この場所に連れて来られた時に自分が何を行なうのか聞かされているので、嫌悪感が湧き出してくる。反射的に男を睨み付け、今回の内容を思い付いた者に対し、汚い言葉で罵る。するとソラの気持ちを察したのか、子犬が男を威嚇しだした。
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