エターナル・フロンティア~前編~

 先程、子犬は男の指を噛んで逃げ出した。それだけ人間に嫌悪感を抱いていたというのに、ソラを護るかのように威嚇している。ソラに懐いている子犬の姿に目を丸くする男であったが、同時にいい事を思い付く。

 しかし、それは最終手段。それに威嚇している子犬に手を出したら、再び噛まれてしまう可能性が高い。

 油断している時に捕まえ、子犬を利用する。

 それが、男の考えた内容。

 子犬は、ソラに懐いている。また、ソラの方も子犬を気にしている様子が見受けられるので、利用する価値がある。

 その点を上手く使えば、強情で有名なソラを簡単に動かすことができる。我ながらいい計画に、男は心の中で笑う。

 と同時に、全てが上手く行けば上から褒められ出世の道が明るい。だが、冷静な態度で物事を進めないと全てが破綻してしまう。そう、科学者達の間でもソラの勘の良さが有名だ。

 まずは、普通の会話をしていく。しかしこの男は、ユアンのような完璧な人間ではない。それに「出世」という部分が今回絡んでいるので、欲が混じってしまう。結果、おかしい部分が出てしまう。

 勿論、ソラがそれを見逃すわけがない。目を細め男を睨み付けると、何を考えているのか問いただした。

「いや、何も……」

「嘘だ」

「嘘は付いていない。これから行おうとしていることは、事前に話してある。それを行おうと……」

「声が震えている」

「何?」

「何を考えている」

 ソラの言葉に反論しようと口を開くが、男は言葉を封じる。此処で反論したところで、相手に勝てるわけがない。それどころか痛い部分を突かれ、惨めな一面を曝け出してしまう。

 なら――

 次の瞬間、男は行動に移す。

 そう、計画を発動した。

 相手が能力を持つ人間であったとしても、薬の投与の影響で普段の通りに動けるわけではない。それに男は、多少身体に自信を持つ。また、ソラの太股の上にいる子犬を捕まえてしまえば此方のもの。男は素早い動きで子犬の首を掴むと、自身の身体の方に引き寄せた。
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