エターナル・フロンティア~前編~

「キャン」

 甲高く短い鳴き声が響く。子犬は滑った反動で、顎を強打してしまう。先程、冷酷な男の仕打ちで身体を強打している。そして今、顎を強打した。我が身に降り注ぐ連続の不幸に、黒い瞳は潤んでしまう。

 しかし、子犬は負けなかった。震える四本の脚で懸命に立ち上がり、ポテポテと歩き出した。

 だが、小さい身体。体力の限界を迎えてしまう。それ以前に、二回も身体を強打しているのでボロボロ状態だった。子犬は真っ直ぐ出入り口に向かって歩いていると思っていたが、徐々に横に曲がってしまう。

 そして壁の近くまで歩いていくと其処で体力が尽きてしまい、その場で身体を丸め休憩するが、長く休憩することはできなかった。何故なら、一人の科学者の男が子犬を発見したからだ。

 数秒、互いの目が合う。すると何を思ったのか、男は子犬の身体を掴まえ室内の奥へ連れて行ってしまう。突然の出来事に、子犬は暴れもがく。だが、男は離すことはしなかった。

 男が子犬を連れて行った場所――其処には複数の機械が存在し、数人の科学者の姿があった。ふと、その中の一人が子犬の存在に気付く。と同時に子犬に向かって指差し、どうして子犬を抱いているのか尋ねた。

「なんか、いた」

「いた?」

「誰の犬だ」

「俺達は知らない」

「俺も同じ」

 此方でも、子犬の飼い主を捜すが誰も名乗り出ない。飼い主が見付からないことに、子犬を連れて来た男は困り果ててしまう。この後、大事な仕事が待っているので長々と子犬に構っている暇はない。

 といって、膝の上に乗せて仕事をするわけにもいかない。男は子犬を抱き困り果てていると、急に子犬が予想外の行動を取る。それは人間に対してのトラウマがそのようにさせたのだろう、子犬は男の指を噛んだ。

 親指に走る痛みに、反射的に子犬を放してしまう。高い位置からの落下であったが、幸い子犬は怪我をしていない。いや、それ以前に早く人間の前から逃げたいのだろう駆け足で男の前から逃げ出す。

 子犬が逃げ込んだ先は、子犬を連れて来た男がいた部屋の隣。その部屋は独特の雰囲気が漂い何処か薄暗いが、その部屋には人の気配が存在した。それを感じ取った子犬は身震いを覚えるが、先程感じた人間の気配と違うことに気付き、引き寄せられるように部屋の奥へ向かった。
< 513 / 580 >

この作品をシェア

pagetop