エターナル・フロンティア~前編~

「早く、着替えてきなさい。時間が経つと、シミになってしまうのよ。それと、食事の時に考えごとをしない」

「……はい」

 小声でそのように返事を返すと、イリアは自室へ向かう。そしてクローゼットを開け時間を掛けて選んでいくが、選ぶといっても納められているのは似たようなデザインの服ばかり。

 それらを一通り眺めていくがこれといっていい服は存在せず、それにクローゼットから出した服はベッドの上まで占領し領土を拡大していく。こうなると、片付けにも時間が掛かってしまう。

「どれが、いいかな……」

 イリアは、これといって服がなかなか見付からないでいた。昨日ショーウィンドーで見た服が手元にあったのなら……と考えるが、金欠の面と無駄な出費を抑えないといけないので購入できなかった。

 その時、ドアを挟んで母親の声音が響く。それはいい加減にしなさいという雰囲気が篭められた声音で、その声音にイリアは二番目に気に入っている服に着替えると、外へ出した服をクローゼットの中に放り込む。そして汚れた服を持ち一階へ急ぐと、母親に手渡した。

 テーブルの上には、焼きたてのトーストが置かれていた。どうやら母親が新しく焼いてくれたのだろう、今度はジャムの量を減らす。その途中で耳に届いた「仕事を増やして」と、嘆息が痛い。

 イリアはトーストを食べ終えると食器を流し台の側に置くと、椅子に掛けてあった上着を羽織り玄関に向かう。朝から何かと慌しかったが、何とかいつも通りの時刻に出発できた。

「今日、研究室に行ってきます。だから、帰りは遅くなると思うから。詳しくは、わからないけど」

「研究が忙しくて遅くなるというのなら、早めに連絡しなさい。皆の食事を作る都合もあるし」

「はい」

 元気よく返事を返し自宅の外に出ると眩しい陽光が降り注ぎ、目を細めてしまう。冬だというのに吐息は白く染まらず、朝から気温が高かった。その為、元気よく駆け出し道を走っていると近所の人が声を掛けてくる。イリアはそれらの人物に返事を返すと、真っ直ぐ駅に急いだ。

 目の前を行き来する多くの車の姿に、イリアは知識を増やすということで以前アカデミーの図書室で昔の車のことについて調べたことを思い出す。昔の車は液体を用いて走行し、排気ガスという有毒物質を排出していたという。それにより大気が汚れ、酸性雨が降り注いだ。
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