エターナル・フロンティア~前編~
「脳を破壊しないで欲しかった。破壊しなければ、利用価値があったというのに……残念だ」
「なら、何故止めなかった。止めなかったということは、そのようにして欲しかったのではないのか」
ユアンが指摘するように、相手はジェイクの殺害を見ていた。脳の破壊を望んでいなければ、そのように事前に言えばいい。しかし、相手はその点を指摘しなかった。要は、彼もジェイクの存在を嫌っていた。
嫌っている相手をユアンが殺害してくれる。これほど面白い物はなく、実に愉快だったという。
「悪趣味です」
「そう言うな。これで貴様の心にもゆとりができるだろう。これからも、努力してほしいものだ」
「ええ、そうします」
「ああ、このことは上手くもみ消す」
「……お願いします」
相手はジェイクとは違い、利害が一致する点が多い。それに立場が上ということで、敬語も用いる。
「その怪我は、早く手当てした方がいい。化膿でもしたら、今後の仕事に差し支えてしまう」
「そうします」
「さて、片付けは私がしよう。この者の死体の回収は、部下達に任せる。脳を破壊してしまったが、使い道はある」
相手が同じ職場で働き同じ仕事を行なっていた人物であっても、死んでしまったらただの肉の塊。自分の研究の道具として、立派に役に立ってほしいという。彼の意見を聞いた瞬間、ユアンは口許を緩める。
相手の計画に対し、特に感情の起伏を覚えない。見方によっては「残酷」や「酷い」という言葉を発するだろうが、ユアンがそれらの言葉を発することはしない。それどころか意見に同意する。
しかし、ふとあることが脳裏を過ぎる。
これは、最初から――
そう、最初から仕組まれた。
ユアンがジェイクを嫌っていることは、ユアンの周囲にいる者達なら誰もがわかっている。そして今回の殺害に使用した武器は、弾丸を発射した時物凄い音が鳴る。
普通、この音を聞き付けて誰かが駆け付けてくるものだが、誰一人駆け付けてこない。それどころか、目の前にいる男は立ち聞きしていた。真相がわかった瞬間、ユアンは肩を震わせながら笑った。