エターナル・フロンティア~前編~

 完全に利用された。

 ユアンがジェイクを殺害したことにより、彼が有していた地位が空く。しかしユアンはジェイクの地位を望んでいるわけではないので、誰かが彼の地位に就き同時に強い権力を握る。

 それを誰が握るのか――いや、考えずとも回答は決まっている。そう、ユアンの目の前に現れた人物が握る。

 現在、能力に関しての研究は四人の科学者を頂点として行なわれている。その一人が殺害したジェイク・マッカーディ。もう一人はユアンを利用した人物で、ブライアン・へッシュ。

 三人目はユアンの義父であるが、彼は肉体を失い脳味噌だけの存在。能力研究の頂点としての活躍と功績は称えられているが、周囲の者達を動かせるだけの権力は有しておらず、名前だけの存在。

 そして、最後の一人は――

 多くの者は、ユアンの名前を上げる。彼はそれだけの功績を残しているのだが、四人目に名前を上げられることを拒む。それにより、頂点に立つ人物は四人ではなく三人と言った方が正しい。

(まあ、仕方ない)

 笑いを止めると、今回の一件は完全にブライアンに負けたと諦める。ユアンは相手を利用するのは上手いが、相手は一枚も二枚も上手だった。

 だが、それは仕方がないこと。ブライアンの正しい年齢はわからないが、50を越えているのは間違いない。人生経験が違い過ぎる。

 ブライアンの部下達がやって来る。彼等は血塗れで倒れているジェイクの姿を見た瞬間絶句し、目を逸らす者もいる。だが上司の命令に逆らえるわけではなく、彼等は黙々と仕事を行なう。

「おや? 行くのか」

「邪魔だと思いまして」

 やるべきことをやったので、これ以上この場所にいる必要はない。それに言葉で示した通り、邪魔になってしまう。また、子犬に噛まれた箇所の手当てをしなければならないので、足早に立ち去る。

 その後、ジェイク・マッカーディの件はブライアンが裏に手を回し黙殺してしまう。人の口に戸を立てられないという言葉が有名だが、ブライアンは見事に科学者達の言葉を封じた。

 どのような方法を用いたのか。人望が篤いユアンでも、流石にこのようなことはできないが、これはこれで有難い。ユアンはどす黒い陰謀が渦巻く中に身を置いているが、本当は予想以上に奥が深い。そのことが今回の件で判明し、ユアンは底の部分がどうなっているのか興味が湧いてくる。
< 544 / 580 >

この作品をシェア

pagetop