エターナル・フロンティア~前編~
科学者は自分の研究の成果を求め、時には好奇心さえも満足させようとする。そんな場所で働く彼女は、いつかは変わってしまうのだろうか。自分が見てきた者達のように――そして、欲のままに突き進む。
いや、裏の部分を知らなければ平気だろう。だが、いつかは知る時が来る。能力者(ラタトクス)と繋がりを持っていれば。それは悲劇的でおぞましいものであるが、知らない方が幸せといえる。
「これだけは、見せたくはない」
ソラは徐に服を脱ぎ、インナー姿になる。そして捲かれた包帯を解くと、隠していた傷に触れる。果たして、イリアはどのように受け止めるか。血生臭く凄惨な、それでいて悲しくも切ない事件を――
そのことを思い出すと心が痛み出し、全身を針金で締め付けられているような感覚に陥る。ふと、視線を手首に移す。其処には何かが刺さったような無数の傷が、消えることなく残っていた。
それらは以前どのような生活をしていたのかを、嫌でも思い出させる。それは手首だけではなく、全身至る所に傷痕はあった。唯一消えたのは首筋の痕だけで、他の傷は一生付き合うことになってしまう。だからソラは、素肌を見せるのを嫌った。信じられる者以外――
「これが、オレ達の運命。そのことを知っているのか、イリアは……いや、無理と言うべきか」
真実を知らないからこそ、普通に付き合ってくれるのだろう。正直“変わっている”が本音であった。一般人は力を持っているというだけで偏見の目を向け、酷い場合は罵倒してくる。
それに対し自分達が何をしたのかと、大声で叫びたかった。しかしその声は、多くの者達の手によって消されてしまう。彼等が持つ価値観に勝てるほどの力を、ソラ達は持っていない。
空しい。
悔しい。
それが、今能力者が置かれている立場だった。産まれてきたと同時に運命が決まっているなんて、なんと無常なことか。いや、これは決められた運命。そう、この世に犠牲者は必要だ。それは生贄に等しいもので、一部の者に批判をし自身の方が優れていると優越感に浸る。
「悲しすぎるよ、とても……」
その言葉で、この世界の現状を表せた。しかし誰一人として、それを訂正する者はいない。歯向かう者が愚かで、そうでない者が正しい。それは、タツキが言っていた言葉。彼女は、歯向かった。歯向かったからこそひとつの枠から外れたが、彼女は決して後悔していない。